【映画】春との旅
2010年 06月 04日
キャストと予告編を見て
▼感想
今年になって初めて映画を観たと思った
▼満足度
★★★★★★★ まんぞく
▼あらすじ
足の不自由な元漁師の忠男(仲代達矢)と仕事を失った18歳の孫娘・春(徳永えり)は、忠男の生活の面倒を見てもらおうと疎遠だった親類縁者を訪ね歩く旅に出る。親族との気まずい再会を経るうちに、忠男はこれまで避けてきた過去と向き合わざるを得なくなる。そんな祖父の葛藤(かっとう)を間近に見ていた春にも、ある感情が芽生えていく。
▼コメント
予告編の段階からこの映画は傑作であると感じ取った作品で、
全く予想を裏切ることなく終幕まで行った珍しい映画。
今年は上映映画のラインナップがパッとしない年のようで、
そんな状況を縫うようにテレビ局が出資もしくは製作した映画が
その強大な宣伝力を生かして観客を動員しているのが現状。
鑑賞本数も例年に比べてグッと減っているのは、
もともとそういう映画が好きではないからで、
そんな状況下で私がこの映画を発見できたのは、
ビートたけし監督映画「アウトレイジ」の上映日程を調べていた時に
ふと目にとまったという、本当に偶然の出来事だった。
この映画を支えているのは、
「良質な脚本」と「良質な俳優」とそれを生かす演出だと思う。
老いてなお圧倒的な存在感のある主演の仲代達矢に、
自分を捨て「春」という役に完全になりきっていた徳永えり。
特に二人の歩き方がすばらしく、
ただそれを見るだけで忠男と春がそれぞれどんな人生を歩んできたのかを想像できるのが素晴らしい。
「生きる」事の意味と価値を問う物語なだけに、
安易な感想はちょっと書きづらいのだが、
過去と向き合いながら春とも向き合う忠男の姿に、
役者人生を振り返りながら徳永えりと向き合う仲代達矢の姿が重なったのは、
多分、偶然じゃないんだろうと思った。
と、まあこういう書き方になったのは、
実はエンディングについては未だに解釈がまとまっていないから。
人生の最後に報われた形になった忠男だったが、
ただ、春の立場になってみるとこれが最良の終わりかただったのか判らない。
確かに蕎麦屋のシーンからこういう形でしか終われない映画だとは感じていたが、
もっといい別の終わり方はなかったのか?
と、考えてしまう自分がいる。
この映画は鑑賞する「時期」「立場」「コンディション」で随分と印象が変わる映画だと思う。
恐らく何年後かにまた観たくなるだろう映画。
その時はまた、違った解釈が生まれるような気がする。
≪追記するコーナー≫
忠男と兄弟をつなぐ横の糸が、「窓を開けたときの反応」や「アダルトチルドレン」的な性格付けだとすれば、忠男と春をつなぐ縦の糸は「箸の持ち方」になると思う。
世代も育ちも性別も異なる二人の役者が、揃いも揃ってあんなに妙な「箸の持ち方」をするはずもない事を考えると、これも間違いなく監督の演出だと思う。
その演出意図は「いったい誰が春を育ててきたのか」という部分についての事で、もしかしたら忠男は、春が小さな頃からずっと面倒を見ていたのかもしれないと気付く。
※そしてそれを知っているからこそ、春も面倒を見てきたのかもしれない。
春については劇中明らかにされない設定が沢山あり、
こういう考察を行うことで気付くような仕組みなのがちょっといい。
※高校は中退しているとか・・・
≪蛇足するコーナー≫
徳永えりが出演している映画は他にも何本か観ているが、全ての映画で彼女について何かしら語っていることを確認。
多分、潜在的に興味をもっているんだな、きっと。
徳永えりを映画「フラガール」で観た時から、いつか大きな役をもらって大きな女優になるだろうとは思っていたが、まさかこんなに大きなチャンスに恵まれるとは全く想像もしていなかった。
これで一気に同年代の女優たちに差をつけた形になった徳永えりの、新たな飛躍を期待したい。
※なんて事を思っていたのに、てっきり蒼井優と同い年かと思っていた徳永えりが、思っていたよりも3歳ほど若く、実は同い年には多部未華子と同い年だったという事実に気付き、それはそれでかなり複雑な感じになってしまった今日この頃。
▼状況
MOVIX伊勢崎にてレイトショウ価格で鑑賞
▼観客
10名ちょっと(案の定シニア層多し)
▼対象
映画ファンの方必見
▼見所
見所というか、こういう映画を沢山上映して欲しいんだよね。
▼教訓
過ぎた時間は取り戻せないし、犯した過ちは決して償えない。だからこそ人は今を真剣に生きて、そして誰かに生かされているということを自覚していかないといけないんだ。
by unknown0083 | 2010-06-04 15:20 | 映画