【DVD】ルート225 2007年 11月 07日

■状況
購入したＤＶＤにて観賞
■動機
多部未華子チェック
■感想
多部未華子の魅力満載

■あらすじ
14才の少女・エリ子（多部未華子）は母親（石田えり）に頼まれ帰りの遅い弟・ダイゴ（岩田力）を迎えに行く。その帰り道、二人は少しずれた世界に紛れ込んでしまう。
そこは死んだはずの少女が生きており、いるはずの両親がいない世界。
果たして二人は元の世界に帰れるか。




■コメント
原作は芥川賞作家、藤野千夜の同名のＹＡ小説。
国道２２５号先沿いの住宅地を舞台にした日常生活と隣り合わせのファンタジー映画といった感じの内容。

主演はエリ子役の多部未華子。
全体的なキャスティングと物語の内容や演出の類を見てみると、彼女のプロモーション映画として作成された色合いが強いという印象を受ける。
しかし、強烈な視線での少し不機嫌な（温度の低い）演技は彼女の持ち味を十分に引き出し、ただのプロモーション映画に終わらせないだけの魅力のある映画に仕上がっているように思う。

また、全体的に一風変わった空気感が漂う。
この空気感にキャストが溶け込んでいて、それもまた楽しい。

映画は主に姉弟のやり取りをメインに展開。
姉は随分と温度の低い今時の女の子風。
弟はどことなくオドオドしたいじめられっこ風。
最初はどう見ても姉弟に見えない二人に違和感を感じるものの、姉が随分と弟想いなことが言葉の端々やちょっとした行動からみて取れるため、この違和感は観進めるうちに払拭される。あれだけむちゃくちゃな言葉を投げかけても問題が起きないのは姉弟ならではだとも思うので、ある意味狙い通りのキャスティングか。
現に物語が終盤に行くにつれて、ちゃんと二人が姉弟のように見えるようになって来るから不思議だ。


物語の序盤に二人はパラレルワールドに迷い込む。だが、ここがパラレルワールドになっているということをエリコはなかなか認めようとはしない。っていうか、普通簡単に認めたりはしないだろう。だが、色の違う造花・覚えのない仲直り・死んだはずの人間が生きているなど、段々とこれはおかしいと気付いていく過程をしっかりと書くことにより、そこから元の世界に戻ろうと行動を開始するまでをしっかりと理由付けを行う。
このあたりの執拗な描写が、姉弟の混乱振りを強く印象付け、二人のおかれた立場に対して感情移入させてくれる。
※序盤、明らかにおかしい案内板を見てもなお「道に迷った」と言い切るエリ子なだけに、やはりこのくらい徹底してやってくれたことはありがたい

元の世界に戻ると決めた以降は、絶対に帰れると信じきるエリ子の前向きさが際立つ。
それは無責任な前向きさからではなく、そう信じることで気弱な弟を引っ張りつつ自分も保とうとするエリ子の弱さと強さが垣間見え好感。
良く考えればこのエリ子という人物、一歩間違えれば滅茶苦茶になりかねない非常に難しいバランスで成り立っている役柄だと思うが、多部未華子の持ち味を十分に発揮し（もしくは引き出し）そして多部未華子でなくては出来ない演技で色付けし、とても魅力ある人物に仕上げている。
これについては、多部未華子ももちろん凄いのだろうが、それ以上に監督の手腕が凄いのではないかと思う。

また、恐らく原作通りのラストに仕上げたであろう脚本も評価。
映画向きのラストではないのでついついアレンジしたくなりそうなところだが、変に欲を出さずそのままのラストにしたところに監督および脚本家のこだわりを感じる。
変えてしまっては意味のない物語なので良く耐えたと感心。


この物語の終焉に姉弟が手に入れるものは、小さな絆と未来へ向かう一片の勇気か。
姉弟この先の未来を胸を張って生きていくだろう。
「どこにいても誰かいない気がする」
そんな些細な台詞が、人の強さと可能性を再認識させてくれる。
この映画はそれに気づかせてくれる。

≪追記するコーナー≫
ちょっとづつズレた世界なので、エビヅカはダイゴのシャツに落書きをしていない可能性もある。ダイゴ目線でダッシュの世界のエビヅカが描写されることはないので、もしエビヅカが本当に身に覚えがないのなら、エビヅカにしてみれば完全にトバッチリということになる。
だがそれにも関わらず（蹴りまで喰らい、取っ組み合いにまで発展しながら）ちゃんと書いてくれるエビヅカ。彼はなかなかいいやつかも知れない。

■対象
失礼な言い方にではあるが「世にも奇妙な物語」が好きな人は好きになれる映画
■見所
多部未華子のファンであれば沢山あると思う中から強いて選ぶなら"エリコキック"