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【DVD】涙そうそう  

【DVD】涙そうそう_d0057574_2111221.jpg■動機
「な行」強化月間
■感想
素直に「みゆき」を撮ればいいのに。
■満足度
★★★☆☆☆☆ あんまり

■あらすじ
那覇で自分の店を持つことを夢見て働く兄の洋太郎(妻夫木聡)のところへ、高校に合格した妹のカオル(長澤まさみ)がやって来て同居することになった。やがて資金が貯まり店が開店を迎えようとしたとき、洋太郎は詐欺に遭って莫大な借金を背負ってしまう。それでも洋太郎はカオルを大学に進学させるために必死に働く。




■コメント
タイトルにもなっている「涙そうそう」といえば、夏川りみの歌う名曲。森山良子作詞、BEGIN作曲によるこの歌は「亡き兄に捧げる歌」としても有名なのだが、映画化されたこの作品も同一のコンセプトで綴られている。
つまりそれは"歌を知っていると内容も分かってしまう"というもの。
それはそれで覚悟の上で映画化したと思ったのだが・・・

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どうして血の繋がらない兄妹という設定が必要だったのだろう。
「タッチ」「ラフ」とあだち充漫画の主演を続けた長澤まさみの為に「みゆき」の設定を使ったのだろうか。
その真意はわからないが、いっそのこと「みゆき」を作ればいいのにと思ってしまった。
とは言うものの、この映画、兄の"ある失言"で台無しになるまでは、非常にいい映画だった。

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兄・良太郎役の妻夫木聡は、その爽やかな風貌を武器に、徹底した好青年、いわゆる"いいひと"として描かれている。
人当たりがよく、お人よし、誰にも平等に優しい彼のことを、周りのみんなが好きになる。あまりに人が良すぎて悪い人に足元をすくわれたりもするが、それでも明るく強く前に向かって生きる、本土の人から見た沖縄気質の好青年。

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一方、かおる役の長澤まさみのキャラクターといえば、
"清純派"
"甘え上手"
"妹系"
"高い難病率" ※自主規制
"とにかく可愛い"
など色々あるのだが、実はこれはかおるも全く同じ。
妹であり清純系であり甘え上手で、可愛い。
15歳から20歳までを担当しているので、テンションの高低と髪型(は演技ではないか)で年齢を感じさせるように演じ分けをしているが、とりあえずはそれだけで、他には特に演技することなくかおるを演じているということになる。
それに甘えたのか、かおるの人物描写が殆どない。
兄のことが好きなんだなと分かる程度に留まっている。
良いんだか悪いんだか。

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この二人に、兄の恋人役の麻生久美子が絡む形で展開する序盤から中盤にかけては非常に好感のもてる映画だった。
兄が死に逝く際に「惜しい人を亡くした」と思わせるための徹底描写もニクイ演出として好感がもて、自分の夢の為に一生懸命努力する姿は見ていて応援したくなった。
詐欺にあったことで状況が悪くなり、それでも自分の夢を一時中断してまで妹の学費を捻出しようとした兄の姿には非常に好感を持った。
のだが。
兄は妹に対しても観客に対しても、言ってはいけない事を思わず口にしてしまう。
「俺が、誰のために働いていると思ってるが?」
かおるはそれをうすうす感じていたらしいが、こちらは全く感じていなかったため、あまりの不意打ちに愕然となった。

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後はダメだった。
体調が芳しくない状態で勝手に妹を助けに来てそのまま帰らぬ人となっては、一瞬でも心の中で助けてくれと願ってしまった妹があまりに不憫だし、さらにとどめとして、自分の出した手紙を受けて兄が贈り物をしようとちその際の無理が原因で死に至ったと知らしめたりと、徹底的にかおるを追い詰める。

あの好青年だった兄が、詐欺にあったことや恋人に本音(かおるちゃんのこと好きでしょう)を看破されたことで心のバランスを崩し、自分本位の人間に成り下がってしまっただけでも十分悲しいのに、その兄に挽回のチャンスを与えることなく亡きものにし、挙句その妹まで追い詰めるという、"切ない"や"悲しい"を遥かに通り越した"無慈悲"な映画。

そんな中、兄の優しさに対して思わず涙を流しているように見えるかおる対して、薄ら寒さを感じずにいられない。
そこは、なんのかんので兄に頼りすぎた自分の弱さを嘆く場面ではないかと。
一体この映画はどうなっているのか。
残念ながら、こういうのが最後まで見た感想になってしまった。

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"泣かせ"は"感動"で起こさせるものであるべきだと思っているので、人を"悲しみ"で泣かせる手法はどうしても好きになれない。
というか「泣かせる映画」の本質を間違っているように思う。

もしあの台詞が違ったものになっていたならば、多くの人と同じようにこの映画に感動できたのかも知れないが、そうなれなかった自分が既にいるので、そこはもう諦めよう。
おなじ"もし"を願うのなら、早急に同じメンバーを招集して、前半から中盤にかけての雰囲気のまま「みゆき」を撮ってくれることを願う方が建設的だ。
そのほうが、比較にならない程の"感動"作が生まれるような気がする、なんとなく。

≪追記するコーナー≫
さて、恐ろしいことに気付いたので一応記載。
この映画は歌謡曲「涙そうそう」の1コーラス目を元に作成されている。
というか、2コーラス目のエピソードが綺麗さっぱり抜けている
イージーミスだとしても、ちょっと考えにくいミステイクだ。
始めからわざと抜かしたとしか思えない。
っという事はもしや?
東宝はこの映画の続編、もしくは別エピソード版を作るつもりだろうか?
そんなことを思ったら、ちょっと背筋が寒くなった。

≪蛇足するコーナー≫
かおるの子供時代を担当した佐々木麻緒の、周りの大人たちに見せ付けるような演技に対して、どうしても薄ら寒さを覚えずにはいられなかったのだが、スタッフロール後のシーンではごく普通の子供の演技のように見えたので、子供の"こどもこども"しているところをやらせる分にはちゃんとできるんだな、などと思ってみた。
どちらにしても、この映画の"無慈悲感"を加速させる為のエピソードに過ぎないのが悲しいが。
ちなみにこの二人、そろって「マリと子犬の物語」に出演し、そこでも兄妹の役をやっているらしい。特に興味はないのだが、これって業界的にアリなのか?

■状況
ライブラリより拝借
■対象
"悲しい映画"で泣ける人であれば大丈夫。
■見所
エイサーのシーンまで。

by unknown0083 | 2008-01-24 21:19 | 映画

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