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【映画】テラビシアにかける橋  

【映画】テラビシアにかける橋_d0057574_23314589.jpg■動機
予告編を観てなんとなく向きかなっと
■感想
やっぱり向きだった。サプライズあり。
■満足度
★★★★★★★ まんぞく

■あらすじ
女兄弟ばかりの貧しい家庭で育った小学5年生のジェス(ジョシュ・ハッチャーソン)のクラスに、ある日風変わりな少女レスリー(アナソフィア・ロブ)が転校してくる。学校を牛耳るいじめっ子のターゲットにされてばかりの2人はやがて親友同士となり、近所の森の中に“テラビシア”という空想の2人だけの秘密の国を創り上げる。




■コメント
個人的にこの映画は他の映画とは別格にしたい。
設定も、世界観も、題材も、キャスティングも、この映画のありとあらゆる全てが自分好みになっているため、どこにもケチのつけようがないからだ。
あえて言うとするならば、「こういう映画が大好きだ」という新たな発見がなかったと言うことと、全てが自分好みであるにも関わらず、自分が製作に参加できなかったこと、そして自分の想像よりも遥かにいい映画になっていた事がとても悔しい、ということか。

この「全てが自分好み」というのは非常に珍しい。
例えば”お気に入り音楽”を自分で編集して車内で聞こうとする場合、どうしても聞かされる他人の事を考えてしまい、100%自分の趣味にすることを避け、2曲くらいは一般的な曲を選んでしまったりする。
※知らない人に説明するのにマニアックなところを避ける心理と言って伝わるだろうか?
ブログでいうなら、真逆の意見を持つ人にトラックバックすると怒られるかな?っと躊躇してしまったり。※最近は全然気にしないが・・・
なのでこの「全てが自分好み」というのは、とても嬉しくもあり、気恥ずかしくもある。

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昔活躍したグループ「ZONE」の曲で「secret base ~君がくれたもの~」という歌がある。
私はこの曲が大好きで、個人的に”21世紀になってから作られたポップソング”の中では出色の出来栄えだと思っている曲なのだが、この映画はこの曲に似ているところがたくさんある。それは歌のストーリーのみならずその沿革を含めて、という意味で。

この曲の素晴らしいところは、大切な友人との切ない別れの歌という主題もさることながら、自分達がいずれ失ってしまうであろう感情や純粋さなどを悲しんだ側面も持っており、それを子供から少女へ変わろうとする年代の彼女達が歌うことで、より一層感情がシンクロする所にあると考えている。
大人になるにつれて失っていくものにふと気づかされるこの曲に、深い感銘を覚えた。

この映画にもそれと全く同じものがある。
そしてそれは、文章で書かれた原作(キャサリン・パターソン著)を基にしている分、映画の物語のほうが奥深く、外国のチャーミングなリトルアクター&アクトレス(ジョシュ・ハッチャーソン&アナソフィア・ロブ)を起用することで、その頃だけの二度と手にすることの出来ない輝きはより一層鮮烈に刻まれる。

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予告編を見て気に入った映画は、殆どの場合どんな映画なのかを想像する。
その想像がぴったりはまることもあるし、全く見当違いだったということもある。
そういう作業が結構楽しいので、映画のチラシ広告(最近はこれをパンフレットというのだろうか?)などをよく持って帰ってくるのだが、この映画は予告編を見ただけである程度の予想がついたのと、結構好みの題材だと思いその時点で鑑賞予定に加えたため、わざわざ持って帰ってこなかった。※なお、公式ページの”あらすじ”は結構ネタバレしていることがあるので極力見ないことにしている

その時点で想像したストーリーは次のような感じ。

あまり快活ではない少年(予告編では名前が出ない)と、活発な少女(予告編では名前が出ない)が、ひょんなことから仲良くなり、近所の森に「テラビシア」という空想の国を作ってそこである種の現実逃避に似た行動をとる。二人は空想世界の冒険に夢中になるが、ある日少女は何らかの事象(きっと事故だろう)で亡くなってしまう。少年は「テラビシア」に少女の面影を求めるが、どれだけ探しても少女はそこには現れない。少女の事を諦めて現実の世界を歩こうと思った時、少女はその姿を現す。少女はいつも少年のそばにいた。

これが全くの的外れであったことは鑑賞済みの人なら分かると思う。
物語の本質は全くそんなところになかった。
要するに「所詮は児童文学」と心のどこかで侮っていたという訳だ。
実際の物語はこんなに生易しくはない。

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二人で作った空想世界はいじめられっこ達の現実逃避の場所ではなかった。
その世界は現実世界に根差した地に足の着いた世界だった。
むしろ、厳しい現実に立ち向かうための訓練場のように思える。
ここでの冒険は、彼らにちょっとの勇気とちょっとの知恵を与えてくれる。それは少しづつではあるが確実に現実世界に生きてくる。
このやり方は全く想定外で、こんなやり方があるのかとしきりに感心した。

例えば、日本人の少年少女が空想の世界を作った場合、それは十中八九現実逃避の為のものになるだろう。そしてそれは複数の人間の共作ではなく、大概は独りだけのものになることが多いと思う。
その閉ざされた世界では確かに英雄やお姫様、もしくはパイロットや宇宙飛行士、またはイチローや中村俊輔になれるかも知れないが、そういった場合、大抵自分は既に無敵で、あまり敵やライバルを意識することはないように思う。
なので、彼らが作った世界もそういうものだろうと思っていた。

だが彼らはその世界に敵を作る。
そしてそれは、現実世界で乗り越えるべき障壁と少しだけリンクしている。
彼らが知恵と勇気を振り絞ってその敵を克服したとき、それは彼らの力となる。
アメリカの少年少女達は空想世界に飲み込まれず、それを操る力を持っているのだろう。
いつかそこを卒業したときに、一回りも二回りも大きくなっていることが出来る。
こういう空想世界の作り方があるとは想像もしていなかった。

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ジェスとレスリー二人の関係は非常に美しい。
二人にはお互い出会うまで、互いに認め合える友人がいなかった。
いじめられっこのジェスは駆けっこと絵だけは得意だった。が、父親から疎まれていると疑う彼は心を閉ざし、誰にも認めてもらえないだろうという後ろ向きな感情に支配されていた。
転校生のレスリーはその破天荒な性格と風変わりな見識から、周りから敬遠されていた。
いじめられっこ同士という事もあっただろうが、ジェスは彼女のその豊かな想像力と前向きで明るい性格に惹かれ、レスリーは想像力を絵という形に変えられるジェスに惹かれ、自然と友達になる。
二人は互いを認め合い、尊重しあいながら、お互いを高めていく。
それは友人とも親友ともましてや恋人同士でもなく、まるで戦友のようだった。

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いずれジェスはレスリーを失うことになる。
予告編を観た人間、原作を読んだ人間はそれを知っている。
なのでジェスの目線で彼女の姿を焼き付ける。
その姿が美しければ美しいほど、それがジェスにとってどれだけ大切で、どれだけかけがえのないものだったかを共感することができる。
ジェスがレスリーを失った時、観ている自分も何かを失ったような、そんな感覚に陥った。

レスリーを演じたアナソフィア・ロブは、これ以上ないというほどの存在感で、この時期特有の輝きのようななものを焼き付けた。
この頃から少し大人になってしまった今では、少女のもつ輝きは出せないだろう。
それは誰もがいずれ失ってしまうものなので仕方がないと言える。
だが、映画には優れた俳優の姿を記録し、観たものに記憶させる、という役割もある。
彼女が大人になったとき、この映画はきっと彼女財産になるだろう。
または、そうなって欲しい、と願う。

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レスリーを失った後のジェスの行動もリアルだった。
まず信じない、次に認めない。
そして探し回り、やがてどこにもいない事を知る。
彼女の身に不幸が降りかかった日、ジェスはレスリーを救う事ができた。
それが彼の後悔だった。
その日彼は何度も振り返り、最後まで彼女も連れて行くかどうか悩んでいた。
※一番悪いのは二人の仲を知っていてジェスだけを誘った先生なんだが(追記へ詳細)
彼女を失った事で、疎ましがられていると思ってばかりいた父親が、ちゃんと自分を愛していてくれた事にはじめて気付く。

彼が、誰よりも認めて欲しいと願っていたのは父親だった。
だから彼は、父親が望むような子供になりたいと思ったし、父が反対することはしないようにしようとも思ったし、その為の努力もした。
が、どうしてもその実感が掴めないでいた。
ジェスは自分が父親に愛されていたことを知ることで、レスリーを失った世界に生きる意味を見つけることが出来た。
彼はレスリーを探すことをやめ、彼を必要としてくれる世界で生きる決意をする。

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自分と彼女だけの世界だったテラビシア。
そこに初めて二人以外の人間を招待する。
それはレスリーを諦める事ではなく、テラビシアを手放す事でもなく、自分達の世界を他人にも開きテラビシアという世界を継続していくという事だろう。
テラビシアにかけた橋は、彼の心の世界にかけた橋だった。
失ったものは確かに大きい。
だが、生きているものの使命は果たさなくてはならない。
生きていくということは決して楽しい事ばかりではない。
それでも彼女のいない世界は続いていく。

最後まで、レスリーの姿を幻影としてさえ見せなかった事が、ジェスと、ジェスに感情移入した人間に対する、精一杯の優しさのように感じた。
それがこの映画の印象をよりいっそう良いものにした。

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人はいつか、忘れながら生きることを覚えてしまう。
だが、誰がレスリーを忘れても、テラビシアがある限り彼女が生きた証は続いていく。
ジェスがメイベルの手をとってテラビシアに招待したように、やがてメイベルも誰かを招待するだろう。そして、その誰かもまた他の誰かを招待する。
こうしてレスリーとジェスで作ったテラビシアは生き続ける。

そしてやがて、テラビシアの話は本になり、世界中の国々を渡り(映画にもなり)、人々の心にその姿を焼き付けるだろう。
テラビシアにかけられた橋は、いまは世界中にある。

もしかしたらこの映画、上映中にまた観にいくかもしれない。
誰かの付き合いという意味ではなく、自分の意思でまた観たい。
何度も同じ映画を観にいく人を「すごいなぁ・・・」と驚いていたのが、その気持ちが今はなんとなく分かる気がする。


≪蛇足するコーナー≫
2007年の日本映画「遠くの空に消えた」に期待していた雰囲気はこういうものだった。
主演を任されたあの二人なら、似たような事が出来たハズだった。

≪アナソフィア・ロブのコーナー≫
実は予告編の段階で少女がアナソフィア・ロブだとは気付かなかった。
アナソフィア・ロブを最初に見たのは映画「リーピング」。たまたま時間が合ったから観ただけの映画だったが、無口な役柄ながら随分と強烈な印象を残したのだろう。なかなか覚えられない外国人名を一度観たきりで覚えているのだからそれは間違いない。
次の出演作も観たいと思っていたところ、意外な形でそれが実現した形になった。
この映画の後にとった作品がもし日本で公開されるなら是非また見たい。
しかし・・・アナソフィア・ロブが、大後寿々花や菅野莉央や志田未来と同い年か・・・
世界はすごいなぁ・・・


■考察
事故の起きた日に関する考察を特別に追記。
【映画】テラビシアにかける橋_d0057574_22511032.jpg
事故の起きた日、ジェスはレスリーの事を一瞬気にかける。
ちょっと不思議だったのは、通常、憧れの人からの誘いに舞い上がっていたならば他の事など気にならない。というか他の事など頭の中からすっぽりと消えてしまう。
だがジェスは、レスリーの事を気にかけている。
それも一度ではなく、何度も。
これはこの誘いに舞い上がっていない証拠だろう。
ジェスはレスリーを誘いたかったのだと思う。

では、なぜ誘わなかったのか。
それは、先生に気を使ったからに他ならない。
ジェスの家族は貧乏で毎月切り詰めた生活を余儀なくされている。もちろん美術館に行くのは初めてなのでチケット代もいくらかかるかわからない。自分の分のチケットは余っているかも知れないが、さらにレスリーの分までとは到底頼めない。貧乏な家庭故にシビアになった金銭感覚が、ジェスに遠慮という選択肢をとらせた、と考えると彼の行動はつじつまが合う。

そうすると別の疑問が生まれる。
なぜ、このシーンには一体どんな意味が隠されているのか。
個人的にこのシーンは「原作者から息子に対する贖罪の意味合いを持つシーン」という気がしてならない。

この映画の原作本は、同じように友達を失った息子のためにかかれたものだという。どんな事故だったのかはわからないが、もしかしたらジェスと同じような状況で失ったのかもしれない。そしてその際に息子と友達を引き離したのがもしかしたら母親だったのかもしれない。
他人を責めることもせず、ひたすらに自分を責めて心を閉ざした彼を救うために、自分を責めても解決にはならない、私も責任を感じていると暗に示すことで、ひとりで悩まなくてもいいようにしたのかもしれない。

事実、このシーンを思い返して、
「悪いのはジェスじゃなくて、
 二人の関係を知っていながら気を回さなかった先生なんじゃないか?」
と考えた。
「巧妙な大人の手口でジェス一人だけを誘い出した」
と、ここまで考えたら考えすぎだろうが、そういう側面も少なからずあったように思う。
もちろん、それを知ったところでジェスは救われないだろうが、なにも一人で背負う必要はないと暗に示すことで、彼を救おうとしているように見える。
言葉にするのはとても難しい、そういう深い愛情のようなものを、このシーンには感じた。

■状況
イオンシネマ太田店にてレイトショウで観賞
■対象
ZONEの「secret base ~君がくれたもの~」で感動した人必見
■見所
「工具に詳しいの?」っという台詞にはちょっとやられた。
"イナゴ少女"こんどは"トンボ"を操る、巨人とダークマターの正体、8年生。

by unknown0083 | 2008-01-28 20:40 | 映画

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